ストアコンセプトの設定は、小売業やサービス業、飲食業が成功する1つの鍵になります。
スターバックスコーヒーが日本でも成長できた一つの要因として、ストアコンセプトの設定が挙げられます。
スターバックスコーヒーでは、「サードプレイス」というコンセプトを標榜していました。これは、「家庭」でもなく「職場」でもない、第3の場所としてスターバックスのショップ空間があるということです。
具体的には、くつろげる空間、楽しめる空間といったところです。
このストアコンセプトに紐づく形で、種類の豊富なラインナップ、ウッド調のテーブルやイスをはじめとする内装のイメージ、全席禁煙、明るく笑顔での接客などの要素が存在していると考えると、一貫性が見えてきます。
スターバックスコーヒーはライバルであるドトールコーヒーに比べて、商品の価格が高い、オーダーしてから商品を受け取るまでの時間がかかるなどの、顧客から見た不都合があります。
しかし、「サードプレイス」というストアコンセプトで、「安価な飲料やサイドメニューを迅速に出す」というコンセプトではなく、「少し高くても、くつろげる、楽しめる空間を提供する」ことを、根の部分に持って、様々な施策を実行しているからこそ、コンセプトに共感した顧客が納得して利用することができるのではないでしょうか。
以前、友人でスターバックスにいまだに一度も行ったことがないという人がいます。彼は、喫煙をするから、全席禁煙であるスターバックスコーヒーに行かないそうです。
ストアコンセプトは、戦略ドメインから派生します。ドメインについては、以前に「スープストックトーキョー」の事例で述べました。誰に、何を、どのようにという3つを考えることです。
スターバックスコーヒーが考えた「誰に」という範囲に、私の友人は入っていないことになります。
それまで、日本に喫茶店チェーンで全席禁煙というスタイルはありませんでした。
スターバックスコーヒーでは、「なにを」提供するかを考えた時に、その部分は犠牲にしても、飲料やサイドメニューの提供を通してやすらぎやくつろぎ、楽しさなどを提供しようと考えたのではないでしょうか。
戦略は「選択と集中」です。しっかりと選択し集中してドメインを策定した結果が、日本での成長の要因だったと考えられます。
そのドメインに従って、商品、店舗内装、販売促進、接客などの施策を考えた結果が今のスタイルです。そして、そのドメインをしっかりと端的なフレーズで表したのが「サードプレイス」というストアコンセプトです。
ストアコンセプトは対外的にも対内的にも、自社のドメインにもとづく考え方を知らしめる役割を担っています。
小売業者は、自社のドメインが何かを見直し、それをストアコンセプトという形でしっかり発信していく必要があります。
流通コンサルタント 岩瀬敦智
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