前回に引き続き、日本マクドナルドの強さの秘密を探ります。原田社長の文献を紐とくと、日本マクドナルドの強さの本質が見えてきます。
日本マクドナルドの強さは、「Ⅰ集客する⇔Ⅱ来店した顧客に魅力的な店舗体験を提供する」というスパイラルを愚直なまでに繰り返していることだと考えます。そして、「Ⅲそれを実行する人材の育成」も挙げられます。
Ⅰ.集客する
日本マクドナルドでは、プロモーション活動だけでなく営業時間延長や、品揃えによっても集客を促進しています。
①24時間営業
まず、特筆すべきは24時間営業の店舗が増えてきたことです。まさに、時間的な制約を排除し、お客様が来店しやすいように間口を広げる取り組みです。
②効果的なプロモーション施策
プロモーションによる集客も特徴的です。新商品投入時に大々的なテレビコマーシャルをうっています。エビフィレオ、メガマックはコマーシャルの効果で話題になりました。
メガマックは、発売開始日の前からテレビ告知を頻繁に行い、発売日までに需要を喚起する手法をとりました。消費者の期待感を高め、期待感が消費者の口コミを通して広がっていくことを狙いとしていました。
③品揃えの多様性
低価格で手頃ながら商品に多様性があることも注目ポイントです。高校生や大学生をはじめとする10代から20代前半の消費者には、100円マックが支持されやすいです。
また、プレミアムローストコーヒーという高級感のあるネーミングのコーヒーを提供することで、サラリーマン、OLのカフェ需要に対応しています。
朝に朝食用の別メニューであるブレックファストメニューを展開することで、学生やサラリーマン、OLの朝食需要に対応しています。
サラダを取り扱うことで、健康志向の強い消費者に対する訴求も行っています。
確かに、コンビニエンスストアやファミリーレストランと比較すると、多様性があるとは言い難いですが、効率性、迅速性などファーストフードの制約の中で、最大限、多様性を意識していることが読み取れます。
Ⅱ.来店した顧客に魅力的な店舗体験を提供する
店舗施設の老朽化など、マイナス要因もありますが、来店した顧客に快適過ごしてもらうための様々な施策に取り組んでいます。
①オフィス空間の提供
最近では、1人掛け用のテーブルを用意し、パソコンの電源アダプタ用のコネクタの設置や、低価格でインターネットの無線LANが使用できる環境を整えることで、ビジネスパーソンや学生が事務作業を行いやすい空間にしています。
②喫茶店空間の提供
2010年4月には、ゆったりとして寛げる空間を提供する高級店舗もオープンしました。
③子供向けエンターテーメント空間の提供
子供に楽しんでもらう取り組みであるマックDSは、ゲーム機であるニンテンドーDSを持っていくことで、ゲームソフトやコミックの体験版、各種情報を得ることができます。
これらは、居心地の良さや利便性の切り口から、快適に過ごす空間という付加価値を訴求する取り組みといえます。
◆まとめ
このように、シンプルですが、Ⅰ集客、Ⅱ魅力的な店舗体験の提供について、様々な角度から取り組んでいることが、日本マクドナルドの最大の強みであると著者は考えています。
これは小売業、サービス業、飲食業のすべての店舗に共通して有効な取り組みです。この2つについて、いかに自店の独自性を持って、繰り返して実施することができるかが、企業の浮沈の鍵になります。
【参考資料】
原田泳幸著「日本マクドナルドの社長が送り続けた101の言葉」かんき出版(2008)
河野英俊著「マクドナルドに学ぶ集約⇒リーピート⇒売上アップの法則」ぱる出版(2010)
近代セールス7月15日号「徹底解明!勝ち組企業の「経営力」第7回日本マクドナルド」岩瀬敦智(共著)(2010)
流通コンサルタント
岩瀬敦智 Iwase Atsutomo
最近のコメント