百貨店の従来の機能は、百貨店の個性でセレクトしたショップやアイテムを、百貨店独自の演出でお客様に提供することにあります。また、時代を先取りした斬新なブランドを誘致することや、イベントを実践することで1980年代まで小売業をリードしてきました。
現在、慢性化している百貨店の問題点として、同質化が挙げられます。取り扱いのブランドや独自で運営する自主編集売場で、百貨店ごとの個性を発揮できなくなっています。管理業務に重きをおいてきたため、一部の百貨店を除いては、自社で良い商品を買い付け、自社でその商品を販売するという、百貨店本来の機能を失ってしまった結果です。
90年代以降、商品の収集や販売を供給業者に任せて、管理にだけ集中してきました。自社で販売員を育成しないならば、百貨店の看板を背負って働いてくれる、供給業者や派遣会社の販売員の教育を重点的に行う必要があります。しかし現在、その取り組みが十分に行われているとはいえません。
一方で、ブランドやショップを誘致し場所を貸すことで収益を得ているルミネでは、販売員教育を重点的に行っています。全国のルミネで働く販売員を対象に、積極的に研修を実施しているほか、実演することで接客技術を競う大会を実施しています。各小売店の販売員を「ルミネスト」と共通した名称で呼び、一生懸命、教育をしています。全国のルミネで働く、優秀販売員を集めて、コンテスト方式で接客技術を競う大会も、教育の一環です。
ルミネの花崎会長は、「すべては現場力」と言います。谷社長は、「最後に強いのは、お客様の心を動かす力があるかどうか」と言います。ルミネの教育施策を通して、その思いは各販売員に伝わっていると思います。接客力の向上もさることながら、自分たちをコストではなく財産と考え注力してくれていることを販売員自身が感じることで、お客様に対する接し方も大きく変わります。商品や価格は、人を惹きつけますが、最後に人の心を動かすことができるのは、販売員です。
それは、かつての百貨店が持っていた哲学ではないでしょうか。ルミネ以上に、百貨店の名前にコミットメントして来店してくれるお客様が多いことを考えると、ルミネ以上に教育に時間やお金をかける必要があります。
現在のビジネスモデルの中で、百貨店が再生を図るならば、避けては通れない道です。
岩瀬敦智 Atsutomo Iwase
Yeah, that's the tieckt, sir or ma'am
投稿情報: Valeska | 2012/04/27 20:31