3つの切り口のうち、2つ目が後継者としての能力をどう向上させるか。これは、親族内の後継者か社員から登用するかによっても若干違いますが、ここでは、おおよそ両方に共通する内容を述べてみたいと思います。
大きく変わる「必要な要素」
中小企業の後継者をどのように育成するか。これまでその方法論はあまり議論されてきませんでした。中小企業のほとんどが、高度経済成長時代以降に創業、つまり創業社長が若かった為、考えなくても良かった時代だったことがその一因です。
では、どのように後継者は能力をつけていく必要があるのか。時代は、大きな変革期にあり、これまでの経営者の様な強烈なリーダーシップでカリスマ的な経営を行っていくだけでは企業存続は難しい時代になってきています。下記の図は、経営者に必要な要素の変化をまとめた表です。
経営者に必要な要素の変化
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これまでの経営者に必要な要素 |
後継者に更に、必要な要素 |
能力 |
カリスマ、人を感化させる能力、実行力 |
計数管理能力、仕組化する能力、論理的に考える能力、視点を変えて見る発想力 |
人脈 |
業界内、政治的 |
異業種 |
必要な経験 |
業界内の経験 |
成功体験 |
マインド |
上昇志向、拡大志向、競争に打ち勝つ |
新しいものに取り組む意欲 変化を恐れない気持ち 過去を捨てる勇気 |
「筆者作成」
今にもまして、必要な要素は増えることは明らかです。CMでおなじみの株式会社 山本山は400年以上続く長寿企業であり、家訓、承継の仕組みも確立されている企業です。社長の山本 嘉一郎氏は講演の中で「これからの後継者は我々の時代に10年20年かけて学んできたことを2年~5年で学ばねばければならない」とおっしゃっていました。後継者に求められる能力、力をつけるスピード感が以前とは違ってきていることがこのことからも分かります。
能力向上について具体的取組
では具体的にどんな手法があるのか以下に『百年企業、生き残るヒント』の著者である、法政大学大学院・久保田章市教授の研究を基にした、事業承継に成功した会社の共通した取組を示してみました。
成功した企業に共通した取組
・他社勤務を3年~4年させる
・ヒラ社員から入社させ、現場を体験させる
・役員になる前に営業と経理は必ず経験させておく(役員になるには30代半ばが良い)
・役員になったら自分のそばに置き行動を見せる。状況に応じて意思決定させる
・体系的な経営の勉強をさせる(中小企業大学校、公的後継者育成講座、MBA)
・人脈を引き継ぐ(日常の業務の中に含めていく)
・社長をバトンタッチするのは40歳代前後が良い
・右腕になる人材を常に育成しておく
・社長交代後も3年~5年を目安に「お金」についてはチェックを行う。
このような取組を踏まえ自社に置き換えた経営計画書を立案し、自社に合った後継者育成プランを作ることが最も望ましいと考えられます。とは言うものの、日々の業務に優先順位がおかれなかなか難しいと言う場合には、外部の専門家を家庭教として依頼し、確実に能力を向上させていくことも一案です。私の友人の後継者は、税理士、コンサルタントに事業承継のアドバイスを他社の事例を交えて受けているそうです。次回は、3つ目の切り口「法律、制度的側面への対応」について述べてみます。
It's really great that people are sharing this ifonramtion.
投稿情報: daniel | 2012/04/27 23:35