ホンダの一輪車が発表されたが、その創造力には本当に魅力を感じる。
昨開発したU3-Xは、搭載した傾斜センサにより車体の向きを検知し、どの方向にどの程度の速度で移動したいのかという搭乗者の意図を判断する。同時に、そのデータにもとづいて傾斜を回復する制御を行う。これにより滑らか、かつ機敏な動きと体重移動のみの簡素な操作性を実現した。2足歩行ロボットの分野で多用されている倒立振子モデルの制御と類似しており、ASIMOで培ったバランス制御技術が生かされている。
また、HOT Drive Systemにより全方位への移動を可能にした。同機構は、複数の小径車輪を一列につなぎ合わせて大径車輪を構成したもの(下図)。大径車輪を動かすことで前後移動を、小径車輪を動かすことで左右移動をそれぞれ行い、さらに、これら2つの動きを組み合わせることで斜め移動を可能にしている。ホンダによると世界初の機構という。
http://robonable.typepad.jp/news/2009/09/20090924-ba77.html
以前、ホンダのシビックがアメリカのマスキー法をクリアーしたときの、アメリカ同行メンバーの一人で、現在、関連会社の工場長をしている小林さんのお話を聞く機会に恵まれた。小林さんは、いつもホンダで言われるのは、「ホンダには不可能がない!」ということだとおっしゃる。新しい開発でうまくいかない度に、周りから言われたことを、楽しそうに話してくれたが、ここにホンダの強さがある。しかし、そのホンダも世代が変わると、そうしたことは薄れてくるだろう。しかし、組織のDNAには、しっかり刻まれている。
私の人生の中で得したと思う大先輩の一人が、今のように分析的な戦略が批判される随分前の25年前に、「ゴキブリ経営」といった考え方を教えてくれた。戦略がブームの際に、戦略を否定するようなことを言っていたのは違和感があった人も多かったが、今にして思えばその通りだ。本質は、時代を越えて通用する考え方である。
「ゴキブリ経営」とは、長期的な視点というよりもむしろ短期で、環境に合わせて機敏に方向性を変えながら生き延びることを言う。
実は、昨日、マーケティングで有名な嶋口法政大学院教授の話を久しぶりに聞くことができたが、学者らしく整理されていて勉強になった。嶋口教授の主張は、マイケルポーター等のアメリカの学者が日本式経営を長期的な視点で考え実行する経営と評したが、実は、超短期の経営ではないか?といった内容だ。これは、「ゴキブリ経営」といった考え方と合致する。
当時、高度経済成長期にあった日本は、経営理念とビジョンを旗印に世界に出て行った。ホンダ、ソニー、セイコー等、戦略的なパースペクトがあって進出したわけではない。しかし、ホンダでいえば、「世界一のエンジンメーカーになる!」といった夢の実現に試行錯誤を重ねたのである。つまり、決して予定通りに行ったわけではない。
しかし、アメリカの企業と根本的に異なるのは、日本は売上が上がらない、採算が取れないといって簡単に撤退しないことだ。そして、その中で市場と対話しながら、原理原則を学習していった。嶋口教授は、柔らかい戦略と表現したが、まさにその通りである。当然、計画された戦略も大切であるが、すべてが机の上でわかるといった仮定がそもそも不自然だ。実際、取り組んでいくと予想しえない様々な状況に遭遇する。その中で、撤退しないで、逃げないで対応していくのである。
つまり、日本の経営には、理念と実行があり、その過程の中で戦略が形成されるケースが多い。これも、立派な戦略である。一見、無謀のようだが、しっかりと理にかなっている。嶋口教授は、欧米のカーニバル型に対して、お神輿型と整理していたが、お神輿は、だいたいの行き先と目安の時間だけ定め、みんなでお神輿を担ぐ。そして、出発するが、最後には、おおよそ時間通りに目的地に到着する。ミンツバーグは、創発的戦略と表現したが、まさに、近い考え方だ。
これからの時代は、どうだろう?おそらく、今までのようには行かないだろう。企業戦士として、献身的に勤勉に働いてくれる日本人像を、これからの世代に求めることはできないし、そのことがいいかどうかもわからない。
まさに、新しい時代にふさわしい戦略の考え方を模索する必要があると思う。
I was looking everywhere and this popped up like ntonihg!
投稿情報: Enoch | 2012/04/25 01:19
Which came first, the problem or the soultion? Luckily it doesn't matter.
投稿情報: David | 2012/04/27 23:58