事業承継が円滑に進まない理由の一つに、相続制度と事業承継が複雑に絡み合っていることが一つの理由に良く挙げられます。この課題を一部解消し円滑な事業承継を進める為、2008年10月に中小企業経営承継円滑化法が施工されました。今回は円滑化法の中でも目玉となっている自社株式の80%の評価減ついて今日は述べてみたいと思います。
最近、よくこの制度について相談されることが多くなっています。本来であれば、相続についての制度的な仕組みのために企業の顧問税理士の先生に相談すればよいことなのですが、多くの先生は事業承継について積極的に相談には乗らないようです。かといって、今回の制度により大きく事業承継が円滑になるかについては、はなはだ疑問に思っています。
相続税評価を80%評価減出来る、相続税の自社株式80%評価減制度
簡単に説明すると・・・・。
A社において常務(息子)が、社長(親)から会社の株式を相続し、社長となりA社を経営していく場合に、常務が支払うはずの相続税額のうち、相続で取得した株式80%にかかる納税が猶予される。(上限は相続前からすでに保有していた、発行済み株式総数の3分の2に達するまで)
非常に画期的な制度だとここまでを見ると思えてしまうのですが、詳しく見てみると特例、猶予と言うことだけあって非常に制約がたくさんあります。相談される企業さんもメリットの部分だけを、見て相談に来ます。以下にその制約を記述します。
制約①
会社の代表者に後継者が就任しないとこの制度は利用できない。したがって、事業承継の計画段階では活用が出来ない。
制約②
経済産業大臣の確認を受ける必要がある。さらに、5年計画後は毎年受ける必要がある。会社を運営する事務負担が増大する。
制約③
事業承継後、相続した株式を死ぬまで持ち続けなければ、相続時にさかのぼり猶予した税金と利子税を支払うこととなる。
制約④
雇用を8割維持しなければならない。現状の景気状況で雇用の維持を確約することは難しい。
以上が主な内容ですが、現在の不確実性の高い外部環境の中でこの制度を選択できる経営者が何人いるでしょうか?さらにこれから、M&Aや事業譲渡、合併分割がますます一般的になっていく時代に、株を譲渡するとさかのぼって課税されるというのはちょっとリスキーなことだと思います。多額の相続税のかかる成長を目指す企業であればかえって、考えてしまいます。
したがって、事業承継を相変わらず一部分からのみ考えられた制度だと私は、認識しています。なかなか国の施策により事業承継問題を解決することは難しいことが理解できます。次回は、民法の特例(遺留分への配慮)について述べたいと思います。
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