これまで、3つの切り口で中小企業の事業承継対策の方策を見てきました。今回は、私が現在具体的に行っている事業承継支援に対する事例をお知らせいたします。
事例会社:地方の一般的な建設業
3つの切り口を中でも述べてきましたが、事業の魅力を企業は常に高めていかねばなりません。その一つの方策として、経営革新を図る上でも後継者がリーダーとなり新規事業をスタートされることは非常に有効です。将来、経営者になれば必然的に重いポジションで経営判断を行うこととなります。したがって、後継者のうちにそのプロセスを経験しておくことは将来、非常に大切な経験となります。
<企業概要>
A社は地方都市で公共事業をメインにとしてきた建設会社です。最盛期の売り上げは21億円に達し地域では有数の建設会社でした。しかし、近年公共事業が激減し、民間の工事に事業の柱をシフトしました。しかし、公共事業の穴を埋めるには至っておりません。現在の売上高は9億円で、借入金が現在4億円あり資金繰りは繁忙です。近年、現状の打開策として農業ビジネスの新規事業を開始しました。設備投資等で1億円投入し自然発酵の培養土を製造のプラントを建設しました。当時、周辺からは正気の沙汰とは思われず、銀行も、やれとも言わず、やめろとも言わずあいまいな返事を続けるばかりでした。しかし、現在、培養土の売れ行きは好調で、さらに行政等が全国からプラントの視察に訪れるまでになりました。社長は現在64歳なので今後どのように事業承継を行っていくかを考えています。会社には長男も勤務しており、民間工事事業部のリーダーをしています。しかし、社長は、後継者は農業事業をここまで仕立てた取締役のM氏を後継者に指名して数年以内での事業承継を計画しています。M氏(47歳)は営業畑、近年管理の仕事を行ってきました。
この事例会社の課題
現状を分析した結果次のような課題が浮かんできました。
・銀行の債務をどうするか
→M氏が代表者になれば借入金4億の保証人にならなければなりません。
・新規事業の位置づけをどうするか?
→将来性が大きいのなら別会社での経営も考えることにより成長スピードを高めることができる。
・公共事業が主体の会社だったので自社商品、自社で販売するノウハウがない。
→現状のままでは、良い商品も販売力がないために世に出ない。
・社長の長男とM氏との関係は将来どのような関係が良いのか。
→会社の株は将来、長男が相続することになる。
具体的支援策
現在これらの課題にM氏には、資金繰り、銀行対応、マーケティング、市場分析、経営戦略立案等を月に一度学んでいただいています。その過程で、新規事業の進捗度合、従業員さんとの関係をチェックしています。2年間で一定の答えを社長に提出しようと、下記の項目についてコンサルティング支援を行っています。
・M氏が経営者にふさわしいのか
・会社を分社化して経営したほうが良いのか
・首都圏のマーケットをターゲットにどれだけ売り上げを伸ばせるか
現在、フレームワークを活用した社内会議。営業マッピングによる営業戦略立案。具体的銀行対応策など実践し徐々に効果も上がってきました。
大切なことは実践
つまり、これまで話してきた3つの視点をいかに構築できているかが事業承継には大切であり、対策を真剣に考えて動いていれば確実事業承継問題は解決に向かうと最近、確信しています。多くの中小企業は事業承継で悩んでいると言いながら、何も対策を立てていないのが現状です。自社の事業は継ぐ魅力がないというのであれば、この事例企業のように魅力ある事業をつくれば良いのだと思います。この企業の農業事業部には銀行も非常に興味を持ち始めています。事業承継をキッカケに新規事業を始める。新しい事業承継対策に今後なっていくと思います。
株式会社サクシード
代表取締役 水沼 啓幸
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