女性向けのセルフサービスのオシャレ雑貨ショップの先駆け的な存在であるPLAZAの特徴は、正社員からアルバイトに至るまで、自分の売場のカテゴリーに責任を持ち品揃えすることにあります。レギュラーチェーンであるため、本部常駐のバイヤーによる品揃えが中心になりますが、商品の仕入や補充について本部のバイヤー、スーパーバイザー、担当従業員が話し合って決めます。
これは、当たり前のようで実施できている小売業が少ない部分といえます。
たとえば大手ドラッグストアチェーンでは、本部のMD部が主導で商品の仕入れを決めて、店長裁量で若干の商品を店舗ごとに仕入れるというスタイルをとっています。
この場合、店長には品揃えを精査する能力がありますが、一般的な従業員には品揃えを精査する能力はありません。
PLAZAの特徴は、アルバイトに至るまで各従業員に、商品の品揃えを精査する能力を持たせていることです。但し、権限を与えるだけでは、しっかりとした品揃えはできません。具体的に顧客の購買動向、現在のトレンド、今後の新製品の情報などを勘案して、品揃えを決める必要があります。
これらの情報収集は、店舗に常駐している従業員では質、量ともに限界があります。そこで、複数の店舗を見て顧客の購買動向などの情報を収集しているスーパーバイザーや、現在のトレンドやメーカーからの新製品情報を掴んでいるバイヤーと協議して品揃えを決めていくのです。
従業員に品揃えの能力を持たせていることで、代表的な小売店の1つに、東急ハンズがあります。東急ハンズでは、各売場の担当者が「自分が面白いと思う商品」を仕入れるそうです。
コンビニエンスストアやドラッグストアが得意とする本部共通仕入と対極にある考え方といえます。各担当者は、思い入れをもって仕入れた商品だからこそ、何としても売りたいというモチベーションに繋がるのです。
先日、テレビで、東急ハンズのTwitterを使った取り組みが紹介されていました。あるユニークな楽器の実演を行う旨をTwitterでつぶやいたところ、その実演会に大勢の観客が集まり、それがきっかけで、爆発的に楽器が売れたそうです。
このような発想も、自分が仕入れた商品を売りたいというモチベーションが生み出したアイデアかもしれません。
基本的に、流通業とは「商い」を行う業者です。小売業とは、一般的な消費者向けに「商い」を行う業者です。「自分(自店)が良いと思う商品、これなら売れると思う商品を仕入れて、創意工夫で売っていく」ことが、商いの基本であり、醍醐味といえます。
自分が好きな商品を仕入れて、好きな売り方をすることができれば、必ず仕事が楽しくなり、モチベーションは上がります。
現在の多くの大手チェーンストアは、この商品を仕入れるという機能と、商品を売るという機能を分離させて効率化をはかっている傾向があります。もちろん、企業によって本部集中の割合に違いはありますが、前述の大手ドラッグストアでは90%が、本部仕入の商品になるそうです。この場合、売る機能である店舗の従業員のモチベーションは総じて低く、顧客にとって魅力的な買物空間の場が生まれにくいという欠点があります。
小売業が更に成長するためには、顧客に対して魅力的な品揃えと魅力的な売り方による、魅力的な買物空間を提供することが不可欠です。そのために、PLAZAのように売る従業員と仕入れるバイヤーが一体となって売場づくりを行うことや、東急ハンズ方式のように売る従業員に仕入れの権限を持たせるという、新しいチェーンMDの方式が求められているのではないでしょうか。
流通コンサルタント 岩瀬敦智
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