前回は、カンパニー制を見直す企業が多くなったことを書いたので、予測が難しい環境変化の中で、組織構造に焦点を当てて考えみたい。
組織をオープンシステムとして捉える考え方に異論がある人はいないと思うが、外部環境の影響を大なり小なり受けることになる。どんな大きな企業であっても、1社の力でどうしようもできない政治・経済・技術革新その他マクロ環境や、自社に直接的な影響もたらす、競合他社の動き、顧客や供給業者の動きその他ミクロ環境にである。
こうした外部環境は、完全に自社でコントロールすることは、不可能である。例えば、それぞれの組織が置かれて状況の中で意思決定するが、他社の意思決定まで関与することはできないからだ。
例えば、自社の主力商品の値上げといった意思決定をしたとすると、競合他社は、シェアを伸ばすチャンスだと考えて値下げするかもしれないし、逆に、利益率を上げるチャンスと捉え、値上げするかもしれない。そうした自社も複数の企業の連鎖を予測するのは、神業である。もちろん、シナリオプランニングといった戦略立案の考え方もあるが、それとれ完全とは言えない。
近年は、中国やロシア等の社会主義国家が自由経済に参加するといった大きな動きも影響したデフレ基調等、更に、不確実性が増しているのは、誰しも実感していると思う。
では、そうした不確実性が高い環境に対応するための、組織構造はどうあるべきであろうか?このテーマに関しては、既に古く40年も前に、ローレンス&ロッシュが、コンティンジェーシー理論(条件適合理論)として、環境変化に合わせて集権化や分化を選択すべきといった主張をしている。
職能別組織や事業部制組織を、現在も採用している組織が多いが、流れとしては、フラット化組織への移行は多くなった。組織のフラット化は、部課長といった階層を減らし意思決定の迅速化を図るものである。
又、組織のメンバーの知恵を結集しないと、不確実性が高い環境へは対応できない。ドラッカーは、20年も前に、オーケストラや病院といったプロフェッショナル組織の例を出し、知識や情報が主体となった組織に変化していくと言った。
同じくサベージは、工業化社会で機能したピラミッド組織(職能別も事業部別も基本的には、ピラミッド組織である)の効果性が薄れ、ヒューマンネットワーク組織が有効になると言っている。
フラット化は縦組織の改革であるが、プロジェクトチーム制組織は、横(部課)の壁も取り除き、不確実性の高い環境変化下では機能的である。
プロジェクトチーム制組織はフラット化組織よりも身軽で、部や課といった境界線により仕事をするのではなく、都度発生するタスクを遂行するために、必要な人材が集められ、タスクが終了すれば解散する組織である。
実は、私が入社した25年前以前から、現所属会社では、プロジェクトチーム制組織であった。障子の鴨居と敷居に喩え、社内では「鴨居と敷居組織」と呼んでいた。つまり、鴨居はベテラン管理者で、敷居は新人である。ベテラン管理者は新人の育成責任はあるが、それ以外は100数十名いるどのコンサルタントと、組むのも自由なのである。コンサルタントといった業種にマッチングもよく、効果的に機能していたと思う。
しかし、こうした組織が機能するには、組織の構成員が自律していることが前提条件である。つまり、ドラッカーが言うプロフェッショナルでなければならない。そして、組織の運営は複雑になるので、運転技術も大切だ。よく、こうした前提条件を考えないで、流行や思いつきで組織の構造だけを毎年変更している企業があるが、効果があがるどころか組織の構成員が混乱し、逆に、非効果的になってしまうことも多い。
組織の構造は人材とセットである。都度プロジェクト型のチーム制では、サッカーの中村俊輔のように、他のメンバーの動きを見ながら、その場その場で機敏に判断して動かなくてはならない。つまり、自律的に動ける人材であることが前提だ。しかし、ここが難しい。自律型人材を育成するためには、自律型の人材を育成するのが先か、組織構造の変革が先かである。正に、鶏が先か卵が先かということになる。
私の意見としては、組織構造の方が先であると思う。野球のルールの中で、いくらサッカーの練習をしてもうまくならない。環境変化の不確実性が高い中では、組織構造はプロジェクト型チーム制のような柔軟な体制が有効であるならば、その体制で慣れて学習することの方が合理性が高いと思う。
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