最近、事業部制やカンパニー制を取りやめる企業が多い。何故なんだろう?新しいマネジメントを考える際、組織構造は、重要で大きなテーマである。
マネジメントの前提は、基本的には、コンティンジェーシーだ!組織の構造も同様で、唯一絶対の組織構造は存在しない。組織構造には、メリットかデメリットがあり、置かれた環境下においてどう判断するかである。
事業部制とカンパニー制は、会社の定義にもよるが基本的な発想は同じである。職能制組織では、調達・開発・製造・営業・企画等のどこが悪いのかの責任の所在が明確でないが、事業部制やカンパニー制であれば、儲けの単位を明確にして、どこが儲かっていて、どこが儲かっていないのかがわかる。商品別、地域別など、様々な括りはあるが、基本的には、責任の所在は明確だ。これば事業部制カンパニー制の1番のメリットだ。
逆に、デメリットは、
1.短期志向になりすぎることだ!数年後に成果が出るような取り組みは後回しにされる。
2.事業部間、カンパニー間の競争が行き過ぎ、隙間ができ商品が落ちる。
3.事業部間、カンパニー間で、重複した研究・商品開発をしてしまう。
4.人事異動が難しくなり、全体最適の人事配置が難しくなる。 等々
実際、少し前になるが、組織構造のコンサルテーションを数社担当したが、その中の1社は、上記の1~4のデメリットが全て出ていて、ある一つの企業のトップは頭を抱えていた。なぜなら「わかっているが変えられない」ためである。
その企業は、コンピュータSierで全体で、1200名位の規模であり、業種別のカンパニーを20年間やってきた。上記のようなデメリットは、特に最近、ビジネスを進める上での自覚はあったが、特に、1度出来上がったスキームはなかなか変えられないという。各カンパニー長の権限が強すぎて、変革しようと試みてもなかなか変わらない。そのために、外部を使うことになった。
現所属会社でも、カンパニー制を導入したことがあるが、上記のようなデメリットが顕著に出た。業務改革チームが階層別研修のカリキュラムを作ったり、カンパニー制で仕事を回そうとするので、他のカンパニーのテーマに適任な人材がアサインされないなど、同じことが起こるんだなと実感した。
事業部制を更に、発展させ、人事機能や賃金決定権限も加えたのが、カンパニー制と一般的に言われているが、もっと上記のようなデメリットが強く出る。
一方、現状の環境動向を踏まえると、不確実性、複雑性が増す中で、デメリットの方が大きくなってきたことは、容易に理解できる。そうした中で、組織構造の変革が迫られている。そして、IT技術やネットワーク技術の進歩による可能性も含めての幅広い検討が行われている。
組織構造は、戦略そのものであるとった面もあるし、組織文化、もっと具体的に言うと、組織の構成員の日々のコミュニケーションの取り方にも影響がある。官僚組織を見れば、どのようなコミュニケーションが起こるかは明白だ。そして、その効果は大きい。逆にいえば、環境に合致しない組織構造は、そのロスが計り知れない。特に、カンパニー制での調整コストは、物凄い。組織構造の検討は、本当に慎重に且つ、変革は大胆にしないといけない重要なテーマであると感じる。
組織構造を深く検討した学者が少ない中で、第一人者は、J・Rガルブレイスで、現所属会社でも何度か日本でセミナーをお願いしたことがある。そのガルブレイスの著書の中でも、従来からある機能別組織/事業別組織等の組織形態にとどまらず、組織の役割・影響の考察をもとに戦略を実現するための様々な組織のあり方を提示しており、更に、バーチャル組織にも触れている。組織設計を考える上では新しい視点が得られる一冊だと思います。
組織設計のマネジメント―競争優位の組織づくり
著者:ジェイ・R. ガルブレイス
販売元:生産性出版
発売日:2002-09
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