2010年4月24日の日本経済新聞に上場小売業の2010年2月期の投下資本利益率ランキングが載っていました。1位は、アパレル企業のポイントで50.4%でした。2位あさひが35.9%だったことから、ポイントの投下資本利益率が群を抜いて高いことが分かります。
そこでポイントの財務数値をユニクロのファーストリテイリングと比較して見てみると、売上高対売上総利益率が圧倒的に高いことが分かります(図表)。一方で、売上高対販売管理費比率は、ファーストリテイリングの方が低くなっています。
ポイントの投下資本利益率の高さの一因として、売上高対売上総利益率の高さがありそうです。日本経済新聞の同記事によると、ポイントの投下資本利益率が高い原因として「在庫をほとんど持たず、流行や季節に合わせてタイミング良く売れ筋商品を集中的に投入。在庫回転率を高め、少ない運転資本で多くの利益をあげている」と説明しています。季節性や流行性によって売上変動が激しいアパレル商品において在庫を持たずに運営できる仕組みは、死蔵在庫のリスクが少ないという点で魅力的です。
また、ポイントの特徴として、ファッションカジュアルというカテゴリーの中でも、ライフスタイルを捉えたマルチ・ブランド戦略を実施していることが挙げられます。9ブランドを展開しており、それぞれにコンセプトを定めて発信しています。従来の大手SPAであるワールドや、製造卸売業のオンワード樫山、三陽商会などもマルチ・ブランド戦略を採用してきました。大きく異なるのは、ポイントの場合、年代や年齢層よりもライフスタイルにセグメントの主眼を置いていることにあります。例えば、ローリーズファームというブランドでは、「飽きのこないベーシックアイテムと、シーズントレンドアイテムをミックスした清潔なコーディネートを提案します」。グローバルワークでは、「素材の持つ、暖かさ、温もり、風合いを生かした独自のナチュラルテイストなスタイルを提案します」。それによって、同じ20代の女性でも、プレーンなスタイルが好きな人、ナチュラル系ファッションが好きな人など趣向が異なる幅広い層のキャッチアップを実現しているのです。低価格ではなくブランドを顧客訴求の切り口にしていることから、ユニクロ以上の高単価を設定することができ、売上総利益増に繋がっていると考えられます。
今後も動向を注目していきたい企業です。
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