最近、経営理念についてばかり書いているが、その重要性は計り知れないので、今日も続編です。少し前に、横浜崎陽軒の野並直文社長の講演を聞いた。101年続く老舗の3代目である。昔、日経新聞社の本で、企業30年説といった本が話題になったが、30年というのは、あまり根拠がないと思うが、101年と言えば3倍以上である。お話を聞いていて、さすがに、本物の経営者だと感心させられた。
たくさんの印象に残るお話があるので、まず、経営理念についてのお話をご紹介すると、
経営理念 (新社長になったとき作ったもの)
・我が社は、新しい名物名所を創造することにより安全で夢と楽しさのある食生活を提供し、食文化の向上と地域社会の発展に貢献します。
・私達は、創業以来の伝統を尊重するとともに、新たに可能性に対し勇敢に挑戦する姿勢を粘り強く持ち続けます。
・私達は、人間性への信頼とコミュニケーションの活性化により、明るい働きがいのある職場をつくります。
その後、見直した経営理念
崎陽軒は、ナショナルブランドを目指しません。
真に優れた「ローカルブランド」をめざします。
崎陽軒が作るものは、シウマイや料理だけではありません。
常に挑戦し「名物名所」を創りつづけます。
崎陽軒は、皆さまのお腹だけを満たしません。
食をとおして「心」も満たすことをめざします。
経営理念が原因で優秀な社員が辞めていったという。辞めた理由は、経営理念で、当時成長過程にあったコンビニの弁当をやりたいといったことだったそうだ。
その時、野並社長の感じたことが凄い。
「これで、経営理念が本物になった」
経営理念とは、方向性を示すものであるので、排除の論理が働いて当然であるという考え方である。GEの元トップのジャック・ウエルチも著書の中で同様のいことを書いているが、本ものの経営者は、優秀な社員が辞めるといってもアタフタしない。
そして、100年以上続けてきた理由を野並社長なりにまとめたものも教えてくれた。
☆101年の歴史から得られる教訓
1.差別化戦略 ⇒顧客に他社製品・サービスとの違いを認知してもらい、競争上の優位性を築く。(①冷めてもうまい。②小粒)
2.ローカル色をテコにする⇒地域特性を色濃くすることで、更なる差別化を図る。例)白い恋人、伊勢の赤福
3.ニッチ戦略
⇒強みを生かした特定市場への集中化により無意味な競争を回避する。
4.ハンディキャップ・ピンチをバネに
⇒危機を好機と捉え、組織の連携強化と逆境に強い企業体質を築く。
5.フリーパブリシティーの活用
⇒自社に関する有利な情報を報道機関に流すことで、社会全般との良好な関係を築く。※只であり、CMより注目してくれる。
例)シウマイ娘 料理の鉄人 工場見学 等々
6.明確な事業範囲
自社が戦う土俵はどこかを意識して守ってくる。例)バブルの当時の銀行の提案は、ことごとく断った。
他にもたくさんのお話をいただいたが、共通しているのは、ぶれていないことだ。流行りに惑わされることなく、一本貫かれた考え方を持ち、且つ、いつも問い直しているに違いにない。
それにしても、2代目3代目となると、会社を潰してしまうような経営者がいる中、どのようにして、野並社長のような素晴らしい経営者が育成されるのか?是非、知りたいですね。
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