企業理念が浸透しないという悩みを抱えるトップは多い。特に、急激な中途入社で、人員増員した企業は、前の所属企業の文化を持ち込んでくる。そのため、トップの関心事は、組織が崩壊しないためにも理念浸透である。先日、急成長しているライブ・レボリューションの増永社長にお話をうかがったが、急成長しているが、一切中途は取らない。価値観が共有できないからだとおっしゃっていた。また、ビックリしたのは、「バリューマネジメントを重視しているのですか?」といった問いにも、「厳選して価値観に合わない人は、最初から入ってもらっていないので、バリューマネジメントをする必要がない」といった応えがかえってきた。言われてみれば、その通りであり、経営理念や組織文化を大切にしていることが、ヒシヒシと伝わってきた。
昨日まで、企業理念と組織文化の関係について考えてみたい。
起業家であれば、自分一人では実現できないビジョンを他の人たちと共同して成し遂げるために、リーダーシップを発揮する。リーダーシップの定義として一番好きなのは、ドラッカーの定義で、「フォロアーがいること」と本質をシンプルに言っている。確かに、南国の孤島ではリーダーシップは取れない。一緒に自分を支えてくれる人がいて、はじめてリーダーシップが発揮できる。
いずれにしてもトップの組織の構成員とのコミュニケーションを通して、共有化した特有の言葉により、組織の構成員の価値観や行動に影響を与える。
ちなみに、ライブレボリューションの企業理念を象徴する言葉は「人生革命」である。若くして起業し経営していくなかで、企業経営にかかわる全ての人生革命に関わりたいといった想いが込められている。
組織の規模が大きくなると、組織の階層を通してまとまりをつくっていくことになる。サブユニットの内部にまとまりを生み出していけばいいが、時として、部分的なまとまりとなり、組織全体とすれば望ましいものにならないこともある。つまり、組織全体が望ましいと考える文化とは異なるサブカルチャーが形成されてしまうのである。
最近特に多い悩みとしては、世代間ギャップによるサブカルチャーの問題だ。
若い人のことを「俺様社員」と呼び、考え方や価値観の違いに手を焼いている管理者は多い。もちろん、若い人の視点からすれば、おじさんの考え方や価値観は、人によっては「うざい」と言ったことになるのだろう。
理念と異なったサブカルチャーが形成されると、経営理念とは掛け離れた行動が生じる可能性があり、更には、組織として分派行動や葛藤が生じてまとまりが無くなってしまうこともある。
組織文化については、壮大な話になるので、理念 言葉に焦点を当てて考えてみる。ノーベル経済学者ケネス・アローの名著「組織の限界」では、言語について、詳しく述べられている。言葉がなければ、人々は相互作用を展開できない。人が特定の組織での特有の言語を身につけることは、関係特殊投資(その組織以外では価値を持たない投資のこと)になる。
しかし、特有の組織言語は、組織のメンバーシップを形成することで、他の組織とは異なる意思疎通をもたらすことになる。そして、その言葉を身につけた人同士は、頻繁にコミュニケーションを取るようになり、そうした過程を通して、組織文化は他社とは異なるものとして醸成される。だから、理念は重要なのである。
そうしたことを、深く理解しているからだと思うが、ライブレボリューションの増永社長は、2万人以上の応募がある中で、急激に人を増やすことはしない。さらに、LR Heartというクレドをまとめ、組織の構成員への確認を最重要にしている。
※原文も難解な言い回しですが、翻訳は更に原文を直訳的に訳しているためにかえってわかりにくくなっていますので、英語が得意な方は、原文の方をお読みになることをお勧めします。
組織の限界 (岩波モダンクラシックス)
著者:ケネス・J.アロー
販売元:岩波書店
発売日:1999-11
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