金融機関のお客様向けのセミナーがあり、坂本光司教授がコーディネーターであったので、一緒に亀田総合病院へ訪問した。随分前から、患者満足が高いことで有名であったが、なかなか訪問する機会に恵まれなかったが、ようやく実現した。
まず、簡単なオリエンテーションをいただいた後に、院内をくまなく案内を受けながら回った。
正直な感想は「ここまでやるか!」である。
・患者と病院スタッフが廊下で擦れ違わないような動線
・荷物を運ぶ際、音が出ないように、廊下は、絨毯敷き
・病院特有の臭いを防ぐために、タリーズコーヒーを併設
・2時間前までなら、50種類近くからタッチパネルで選べる食事
・500円で病院の外まで、買い物をお願いできるサービス
・家族が快適に泊まれるように作られたソファーベッド
・流れるプールまで設置されたリハビリテーションルーム
・患者が気軽に相談できるように工夫されたナースステーション
・日本で最初に導入された電子カルテ
・自分のカルテなどが、部屋に設置されているパソコンや自宅のパソコン、さらに携帯でも見れる仕組み 等々
頭でざっと思い出すだけで、これだけあるが、実際は、数えきれない程の患者満足に向けた工夫が施されている。
訪問するまでは、富裕層向けの病院であると思っていたが、全く違うことが、亀田院長の話を聞いて確認できた。亀田院長がおっしゃるには、「様々なサービスは、患者満足のため重要だと思っているが、一番大切なのは、病気が治ることだ。いくら周辺のサービスが良くても、病気が治らなかったら、本末転倒である」と、研修医が、手術の練習がいつでもできる施設や、医療機器のメンテナンスをかなりの費用を掛け整備している。
亀田院長(3男)をはじめ亀田4兄弟の御父さんの初代亀田院長は、諸外国と比べても、患者が人間扱いされていない現状を変えたいといったアンビジョンにより、千葉の南端の鴨川に総合病院を作ったのである。亀田元院長は、高速道路がまだ整備されていない当時、緊急患者が出れば、千葉大の病院まで3時間かかる。3時間も掛かれば、落とさなくてもいい命を落とす患者さんも出てくる。そうした事態を変えたいと、あえて、利益を出すことが難しいと言われる急性期病院にしたのである。(実際、急性期病院は、公立病院がほとんどである)現在は、東京から、ヘリコプター30分で搬送される緊急患者も受け入れている。
その思いを4兄弟の息子達が引き継ぎ、富裕層ではなく、一般の患者さんが、満足をいく医療を受けられるような料金設定で、前述のようなサービスを実現している。個室でも12600円/1日で、保険を入っていれば、毎日保険会社からおりる金額だ。そして、亀田院長自身は、一人でも多くの患者さんを診てあげたいといった思いから、朝8時から診察を行い週80時間の労働時間だ。それ以外で、毎日のように訪れる見学者向けの講演や学会での活動を行っている。
さらに、患者満足のための取り組みは、病院スタッフのサークル活動などを定期的に行っているのか?を聞いてみると、全く行っていないという。それで、なぜ、このような卓越したサービスが実現できるのか?と追加質問すると、
「特別な組織を作らなくても、病院スタッフが直接、ドンドン提案してくる。いいと思ったものをやるだけです。それでも、うまくいくのは3割位で、実際は、失敗も多いですよ。都度、見直していますけど、その繰り返しですね。」との回答が返ってきた。亀田院長が、医療に対する思い、アンビジョンがあるから、絶え間ない改善の組織文化が出来上がるのだろう。まさに、会社ではないが、「日本でいちばん大切な会社」で取り扱ってほしいような病院である。
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