カーディーラーでは、値引きをすることが当たり前になっている。自分自身も数年前、ホンダのオデッセイを近くのディラーで購入したが、その際も、こちらから要求したわけではないが、接客いただいた営業の方から、「うちは、20数万円引きますから・・」といってきた。また、カー雑誌には、「ホンダオデッセイの現在の値引き交渉金額」といった内容も置いてある。つまり、値引きすることが、カーディーラーでは当たり前になっているのである。まして、昨年のリーマンショック以降、さすがに、GMの経営破綻後のアメリカのように、1台買うともう一台ついてくるといった極端な販売をしたところはないと思うが、車が売れなくなって値引き幅大きくなっている。
しかし、全く値引きしないでカーディーラーが神奈川県大和市にある。ホンダカーズ神奈川中央である。2005年の日本経営品質賞を受賞されていることでも知られる会社で、全国のカーディーラーの中で13年連続お客様満足No1を続けている有名店だ。
知人の紹介もあって、ネクスト・マネジメント・ラボラトリー(次世代経営研究会)で一緒の伊藤京子さんはじめ、日本でいちばん残したい会社の著者で知られる法政大学院の坂本光司教授他数名で、創業者の相澤会長に取材に上がった。約2時間の取材の中で、本当に多くのことを学ばせていただいた。
冒頭に書いたように、一番ビックリしたのは、若者の車離れその他、構造不況業界だもささやかれている中で、昨年より、販売台数を伸ばしているのである。
では、どのようにしているかであるが、有名なのは、朝の掃除だ。掃除といっても、自分のところのお店だけではない。もちろん、店舗は、手作りでまるで築35年経っているとは思えないほどピッカピッカであるが、店舗の周辺の道路など数キロにわたって、朝早くから徹底的に清掃をする。実際、その光景を目のあたりに見たが、本当に一生懸命やっている姿は感動ものである。
しかし、近所を掃除しても、訪問販売は一切しない。相澤会長曰く、「お客様も喜ばない。効率が悪いだけでなく、訪問した際に断られるような売り方は、営業のモチベーションも上がらない。結果として、業界としての地位も上がらない」とおっしゃる。つまり、店頭接客しかしていない。
では、どのようにして、値引きしないで販売しているのだろうか?
1つは、アフターサービスだ。車を買っていただいたお客様には、オイルオイル交換を実質赤字の1000円で行っている。そして、お客様満足を徹底的に追及する。お客様から5段階のアンケートを取り、“普通”は許されない。お客様からの評価を、社内での評価にも反映させている。
更に、クレームが発生したら大変だ!
相澤会長は、「クレームが出たら、お客様の100倍騒げ!」がいわれ、どんな些細なクレームが発生しても、全店舗へFAXを送り、自らもお客様のところへ飛んでいく。エピソードも教えていただいたが、少し前に修理のクレームがあった際、お客様の前で修理の責任者を殴ってしまったそうだ。それを見たお客様は、「もういい!もういい!」と逆に相澤会長をとめたという。
この位、徹底しているから、感動を呼ぶサービスを生む。そして、感動したお客様は、値引き無しでも喜んで買っていくのである。
しかし、こうした顧客満足経営の裏には、暖かい社員に対する“愛”がある。社員の本代に年間1000万円の予算を組み教養を積ませ、女性社員は、店内に茶室を設けでお茶を学ばせている。その他、社員から希望があれば、フラワーアレンジメントなどの教室にも積極的に通わせている。
社員教育の基本的な考え方を相澤会長にお聞きすると、「自分の息子や娘だと思ってやっている。自分の娘だったら、茶髪はいやだと思うし、お客様でも不快に感じる方が一人でもいると思うから、一切させない」とのことだ。
そうした厳しい教育をしているから、反発もあり実際に辞めていく人もいるという。しかし、やがて帰ってくる。実際、20数名の方が、出戻りであり、ちなみに現社長も一回相澤会長とケンカをして辞めている。
その他、なぜ、値引きしないで昨年より、伸ばしているかの要因はたくさんあるが、とてもブログでは書ききれない。まさに、これからのカーディラーのマネジメントを考える上で、多くのヒントを提供してくれる。実際、取材をしていても感動もので、うかつにも涙腺が何度も緩んでしました。
自動車の構造不況をものともしないお客様満足経営は、本当に感動ものでした。
最近のコメント