人の話を聞かないリーダーが牛耳っている組織の成長は限界がある。というより、時代についていけない。人の話を聞かないから、メンバーもリーダーには何も言わなくなる。すると、情報が入ってこないし、自分の耳当たりのいいことばかり言われるので状況判断を誤る。そして、本当のことを言わない下心がある取り巻きが多くなくなり、組織は弱体化する。大昔からある悪い組織の状況であるが、なかなか人間は歴史からは学べない。今だに、こうしたリーダーにお目にかかる。
自分自身が組織や集団の中でリーダーシップを取ったり、役割を果たしていく上では自己理解は非常に重要であるが、自分自身を良く知る手段の一つとして、自分のことを誰かから言ってもらうフィードバックがある。
自分が自分のことを一番知っていると思いがちであるが、ショーペンハウエルが「他人に中に自分を写す鏡がある」と言っているように、以外と自分では気づいていないことも多い。
時として、非常に厳しい、或いは、間違っている?と思えるようなフィードバックも時にはある。その時、拒否することは簡単だ。「誤解だ!」と思わず言ってしまうことがあるが、行動科学の世界では、「対人関係に誤解はない」というのが基本である。他者が自分のことを、その時にそのように理解したという事実がある。真実・本当かどうかは別として、認知の世界だからである。その認知したという事実に基づいて人は行動する。
私自身が、他者からの厳しい受け入れ難いフィードバックを受けたとき、必ず、気をつける2つの考え方がある。
1つ目は「人間関係に“誤解”はない。“2つの理解”があるだけだ」という言葉である。これは、同時通訳の草分けである西山千氏の言葉であるが、同じ状況を見ても、人によって見え方が違う。
例えば、同じコップの水を見ても「もう、半分しか水がない」「まだ、半分も水がある」と2つの見方がある。コップの水に限らず、同じ現象を見て違う理解をするのは、経験、価値観、その他異なる人間として当然である。
誤解とみると、距離を置きたくなり話さなくなる。益々悪い憶測を持ち関係が悪化する。
2つの理解とみると、近づいていき知りたいと思う。話す機会ができるので本当のことがわかり相互理解が深まる。関係が改善される。
2つ目は、「1%ルール」である。
心理学の大家故ウィル・シュッツさんには、生前何度もお話をお聞きする機会あったが、その中でも印象に残っていることの一つである。内容は「他者から受けたフィードバックの中に、1%の真実はないか?もし、1%の真実があるのであれば、受け入れた方がいいよ」である。1%の真実とまで言われれば、思い当たることが1つや2つはあることが多い。
そうはいっても人間だから、厳しいフィードバックを心理的に辛いときもある。
そんな時は、この2つを思い出して、逆に、役に立つことを見つける。
それでも自分自身の感情がおさまらないときは、いい音楽を聞いて、おいしいものを食べて、おいしいお酒を飲んで、気の合う仲間と会って、後は、時間が解決してくれるのを待つしかない。
以上のようなことを、意識して実行できる懐の深いリーダーが組織を発展させると思う。
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