小売業の魅力は何と言っても、顧客と直接接することができるということです。販売員にとっては、顧客が喜ぶ場面に立ち会えることで、モチベーションが上がります。
ある横浜市内の企業によると、従業員に対して「どのような時に喜びを感じるか」のアンケートをとったところ、最も多かった解答が、「お客さまの喜んだ様子を見た時」だったそうです。
企業にとっては、新たな経営計画や商品政策に活用するためにお客様の直接の反応を探ることは重要です。顧客と販売員との接点をつくるために、小売業はいろいろな工夫をしています。
たとえば、牛丼の吉野家では、あえて食券を使用せずに、食べ終わった後にお会計を直接するスタイルをとっています。お客さまに対して御礼をする機会を逃さないこと、さらにお客さまの反応を見る機会を得るという目的があります。
旅行会社のHISで番号札を用意しない理由は、お客さまがパンフレットを眺めて悩まれているときに、従業員が自らお客さまに対してアプローチをする機会を逸しないための工夫です。従業員は状況に応じて、お客さまの話を聞きます。
また、以前のブログにも掲載しましたが、百貨店の伊勢丹では商品買い付けをおこなうバイヤーが、週末は必ず売場でお客さまを接客することを義務付けています。お客さまの反応を、商品政策にダイレクトにつなげようとする工夫です。
顧客の反応を掴むことは、小売業にとって生命線になります。なぜならば、小売業は製造業や卸売業と違い、今日、今から売場を変えたり、ディスプレイを変えて、顧客ニーズに応えることができる産業だからです。
このような、小さな配慮を積み重ねられる企業が、顧客の支持を集め、堅調に推移しています。本年も引き続き、優良企業の研究をすすめていきたいと思います。
流通コンサルタント 岩瀬敦智
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